いつの日か、又、輪界で 

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大阪でそこそこ老舗のショップが閉店すると聞いた。関東に本店を置く総合アウトドアの会社らしい。自分の一つ下の会社の後輩に玉木(仮名)という男がいた。ハードウェア設計部に所属し、休日は寮からホド近い鎌倉の海で、ウィンドサーフィンに夢中やった男や。入社後6年が経過したある日「僕、プロ(ウィンドの)になるんで、会社辞めますわ、、、」。「そうか、、、」と言ったきり言葉が出ん。想像つかんかったな、そういう世界は。しばらくして大阪心斎橋のサーフショップの店長になったと葉書をくれて、訪ねてみたら、レンガみたいな日焼けした顔で、出迎えてくれた。次に連絡くれたときは、系列会社がアウトドアショップを立ち上げて、そこの自転車フロア責任者になったと言う手紙。手持ちのボードを打って、ボテッキアのクロモリを買ったと自慢されて、羨ましかった覚えがある。逢いに行ってもテキパキと接客をこなすのを邪魔せんように、パーツ棚の影からそっとエールを送っただけかな。しかし、場所が悪い。たとえて言うなら、竹下通りのど真ん中にプロショップがあるような感じ。とてもレーパン&ジャージで行きたくない。ロードレーサーより、だらしない衣装を着て、BMXで乗り付けるような場所やったからな。それでも、展示レイアウトの変更やイベントの企画で、懸命に集客に奔走していたようや。
次に逢ったときは、店長から社員に降格、その次はバイト待遇に。嫁さんも子供もおった筈やから、アトが無い状況やったと思う。
閉店すると聞いて、顔を真っ先に思い出したけど、自分にはどうすることもできへん。輪界を辞めていった人を数人見たけど、円満な最後をあまり見たことがないな。有名な選手の「向かい風が、いつも自分を、強くした」という言葉があるけど、これは彼を強くするんかな?もう、俺に連絡なんかせんでエエから、フルカンパのボテッキアと嫁さんと子供を大事にして、何とかがんばれ。

どうか、彼に、出来るだけ穏やかな向かい風、吹いたってくれ。たのむ。