またいつか

春に続き、秋も転勤シーズン到来やね。転勤に伴う職場の変化や家族の引越しなど、大変だと思う。

学生時代、短期のバイトで「引越し運送」をしたことがある。当時(20年前)としては破格の日給で¥6,000を越えた。もちろん一軒の時もあれば、日に三軒というハードな日もあってのこと。一度キリやけど”特命便”に借り出された。バイトを終えて下宿でゴロゴロしてたら、職場の先輩から電話があり、「今から(仕事に)こられへんか。」と誘いが。残業代と夜食が出るって話に釣られたけど、最後の言葉が妙に気になった。「黒のジャージと、長袖(黒)のパーカー類着てこい」。

普段は大手運送会社の下請けでも、社名入りのトラックを使うのだけど、その夜はどっから借りてきたんか判らん、無印の4tパネルトラック。秋口なんで、冷え込みがある晩の11時に現地着。社員の人(やはり黒づくめ)が、依頼を受けた家の様子を見に行って、走って車まで戻ってきた。戻ってくるなり「はよコイ!全員靴下脱げ!」と指示された。それと「絶対途中で声出すな。ほんで電気は点けるな」。先輩に聞かんでも事情が飲み込めたわ。その瞬間一気に喉が渇きだした。
自分だけ蚊の泣くような声で「しつれいします、、、」と言って玄関を入った。数時間前まで人がおったような空気。普通の引越しにあるような、箪笥や電化製品の類には一切手を付けず、押入れの中のダンボールとか、箪笥の中身だけとかテキパキ運んだ。暗闇に目が慣れてきたら判ったけど、全員「爪先立ち」で運んでる。無意識に呼吸まで殺してるし。予定の荷物をトラックに運び込んで、一気にその場を離れ、幹線道路に出た瞬間、全員同時に「ブッファ〜!」と息を吐いた。もうなんか、夜食も残業手当てもいらんから、早よ帰りたかったわ。横に乗ってる先輩は、バックミラーで後ろをしきりに気にしてるし。
営業所で自分と先輩はトラックから降りた。社員の人は、そのままトラックをどっかに運んでいってしまった。誰もいない事務所に入り、応接セットで先輩と弁当を食った。「しんどかったやろ」と言われたけど、返事する元気が出ずに、飯を口に放り込んだ。味なんか全然わからんし。
たった30分ほどの仕事やったけど、3日分くらい疲れた。部屋の間取りや家具を思い出してみると、家族4,5人で普通に暮らしてはった様子。あの家、これからどうなんねん、住んでた人どうなんねん。そんな事考えてたら、体の力がどんどん抜けていきよる。あの家族、うまくいって再出発したあかつきには、白昼堂々と引越しを手伝いたいなって思った。

自転車友達がまた一人、東へ行く。誰が行っても寂しさはあるけど、「男気と感謝」は全国共通なんで、どうか忘れずがんばって欲しい。また逢える日まで、俺は北摂の平和を守っておくからな。