車買うぜ

週末に新車がうちに来る。ワクワクする気持ちより、実は今の車との別れを考えると、寂しさの方が大きいな。
始めて車を買ったのは、生意気にも21歳でした。下宿の先輩が20万円で買った中古を、更に4万円で売ってもろた。”スカイライン2000GT”いわゆる「箱スカ」や。自分にくれる時に先輩がGTのエンブレムの横にマジックで「−R」と書いてくれた。自分で消すことは礼儀に反するので、早く雨風に打たれて自然に消えてくれと願ったもんや。実際は「−R」が消える前に、田んぼに落として廃車になった。ウインカーのレバーを手で押さえとかんと勝手に戻ってしまうので、これに気を取られてハンドル操作が疎かになった訳やね。泥だらけになった車が、田舎のレッカー業者にだらしなく引きずって行かれる姿は、相手が生き物やないのに、本当に悲しかった。シートに座ってハンドル握った瞬間の高揚感を最初に教えてくれた車やった。

就職して回りの友達は、AE85とか86のレビン、トレノを買っていた。そして自分が手にした車は、カローラFX。グレードはGTでもGSでも無い。すなわち「商用車」。一切の飾りを捨てた、実質本位のニクイやつ。新車で納車される晴れの日が”憂鬱だった男”って、おそらく自分位なもんやろな。当時つきあっていた彼女が、装備の少ない車を哀れに思ったのか、大きな掛け時計をプレゼントしてくれた。後部座席のど真ん中に時計。運転しながら時間を知りたければ、、、ルームミラーで見る。その後もぬいぐるみや、カップホルダーなんかで何とか商用車からの脱皮を試みたけど、他人はどう思ってたかな?休日のデートに出かける時、寮の仲間によくからかわれた。「おっ!今日も営業か!?」とかね。その後彼女とも別れ、ぬいぐるみも消えたけど、相変わらず掛け時計は後ろの席に座って、自分の運転をジっと見てくれてた。

その後も何台か乗り継いだけど、実はその時々で本当に買いたかった車に乗った事が無い。高価格、高性能の車にはいつだって憧れはあるけれど、結局は縁。自分にとって大事なのは、馬力やデザインじゃないのかもしれん。

今度のは国産コンパクトカーで、ちゃんと時計も付いてる。
あの日の掛け時計は、今も我が家のトイレでコチコチ動いてます。