流したこと

ついでやから、他の楽器のことにも触れておく。

社会人になってからも、メンバーは変わったが細々と音楽は続けてました。
ある日お袋が、どっからどうやって手配したのか分からんけど、どもかく
「ドラムセット」をもろてきてくれた。

知り合いの息子(どこにでもドラ息子っておるもんやね)が手放したらしい。
マンションのせっまい四畳半の部屋に運び入れた。「自分の目の前に
ドラムセットがある」という気持ち。わかる?

自分の家に芸能人がおるんとおんなじ気持ちなんよ。それくらい珍しい
こと。最初は嬉しゅうて仕方ないけど、日がたつと「邪魔でしゃぁない」。
普通にたたいたら物凄い音だから、全然使い物にならん。
太鼓の隙間に布団敷いて寝起きする不便さ。物ひとつ取るのも、いちいち
大太鼓またいで、小太鼓またいで、シンバルのしたくぐって、ペダルで
足の小指打ちつけてようやくたどり着く。ごっつい「長旅」やな。

バンドのメンバーでサックス担当のH君が、一人でアパート借りて住んでる
のを思い出し、とりあえずセット一式の保管に押入れを貸してくれることに
なった。半ば無理やりともいうけどな。

半年ほど置かしてもろたけど、H君の結婚が決まってアパートを出ることに
なった。申し訳なさそうにドラムを引き取ってくれ言いよる。
「うち狭いねん、アカン。」もともと自分の荷物やのに無茶な理屈で断った
けど、さて困った。出した結論は「捨てる」。でも、粗大ゴミの日は遥か
先。H君の引越しは間近に迫ってる。「結婚祝いやとおもて、もろてくれ」
と拝み倒したけど、断りよった。まったく、友達の気持ちの全然分からんや
つや。

当時のベーシストが恐ろしい計画を思いついた。前の話といい、ベース
弾くやつの頭って怖いな。ベーシストいわく「H君のアパートの横、ごっつい
川(淀川)流れてるやん。台風の日にでも、流したらええやん、ドラム。」

「ドラム、流れるんか!?」他のメンバーが驚いて聞いたら、平気な顔して
言いよった。
「みんなアホぞろいやなぁ。よう見てみぃ。ドラムって中、空洞やぞ。
それにピッチシ密閉してあるからええ音出るねん。つまりなぁ、そこらに
すぐ沈むんちごて、沖合いまで流れるから、絶対バレへんがな。」
「シンバルとかどうすんねん!?」
「これもエエ手あんねん。中央の穴をガムテ(ガムテープ)で塞いでやな、
裏返してそ〜っと、、、」
「そ〜っとどうすんねん!?」
「、、、太鼓と一緒に流すねん。」

マジで終始こんな調子だったわ。だれも笑ってなかったから、
かなり真剣やったんかな、、、。
思い出したらアホだらけの会話だけど、当時としては他にアテが全く無かった。
運よく台風後の増水の日が来て、まぁ決行したわけですが、バスドラム
プカプカ浮かんで流れていく姿は、そらぁ凄かったわ。
スネアドラムは直ぐに沈没。ハイハットもシンバルもまったく浮かばず。

バスドラムのペダルを「記念にくれ」ゆうて、ベーシストが持って帰った
けど、いったい何に使ったんやろ???

※ちなみにH君のお父さんは現在、愛媛県のS宮村で村長
 やっておられます。


自転車:通勤20km 大阪市内も雪ちらついてます